民泊シンポジウム報告会
2016年6月16日(木)に「民泊の未来予想図~観光経済の視点から~」と銘打って、JALF会員限定シンポジウムを開催いたしました。
ジョーンズ ラング ラサール株式会社 マネージングディレクター
沢柳 知彦氏
『民泊』問題における整理すべき課題
近年、大田区の国家戦略特区認定に見られるように、民泊の規制緩和の流れが加速している。
厚生労働省主導で作成中の骨子策定・「民泊新法」が2016年12月までに提出される見込みである。
この新法が制定されることにより、一定の要件を満たせば「許可」ではなく、「登録」(一部「届出」による)によって民泊営業が可能になるため、さらなる民泊法制緩和が見込まれている。
しかしながら、営業上の制限(日数、人数、部屋数割合制限など)については現段階では未定の部分が多い。
また、以下のような消化不良な論点が数多く存在している。
- 民泊新法の消化不良な論点
- 民泊業の法的な位置づけ
- (連続宿泊日数制限時)中途解約による最低宿泊日数逃れの取締り方法はどうするのか。
- 開発規制はあるのか。
- 建築基準法上の扱いはどうなるのか(住宅としての容積緩和措置は維持されるのか、等)。
- 民泊に提供されている住宅に対する税務上の扱いはどうなるのか(現在、宿泊料は消費税課税、家賃は非課税であるが、民泊宿泊料は課税対象となるのか)
それに加え、以下のような問題も現時点で抱えている。
- 現時点で抱える民泊問題
- 年間日数制限の運用方法
- 非合法プレイヤー摘発手法・予算措置。(京都市では苦情ダイヤル設置。しかし、近隣迷惑対策にはなっても、脱税や日数制限違反には無力)
上記のような民泊を取り巻く問題を解決するため策を講じる必要がある。
例えば、民泊税を徴収し、取締強化および統計把握の予算を立ててはどうか。それにより、結果的に所得税・消費税の把握にも貢献するのではないかと考える。
すでに民泊提供住戸が増加しているNYCでは、民泊の宿泊税をAirbnbが徴収・納税しているという例もある(但し、所得税は対象外)。
しかしながら、税徴集を行うことにより、NYCでは、問題も発生している。
好立地民泊を営業することにより、その地域の賃貸価格相場が上昇が生じていることだ。すでに欧米ではこれらの問題が顕在化しており、日本でも新法制定にあたり、民泊税徴集が義務化されればNYCのような事態も充分に起こりうる。
上記の海外事例のように、日本の民泊法制緩和にはまだ問題が山積している。
アットマークベンチャー株式会社 CEO代表取締役社長
大津山 訓男氏
民泊と地域経済復興について
- 民泊による地域経済復興の鍵
- 1. 近年発生した311や熊本地震などの被災者に、東京の民泊を提供。被災者に宿泊のノウハウをシェアし、地元へそのノウハウを持ち帰ってもらうことにより、民泊の広がり、及び地域経済の復興へと繋げる。
- 2. 民泊で成功するには、様々な地域での成功事例をベンチマークし、学ぶことが重要。エッセンスを吸収し、取り入れられる箇所はどんどん取り入れる。
- 3. 日本国内のみならず各国のゲストとも積極的に関わり、情報交換することが必要。
- 4. 単純に宿泊場所を提供しているのではなく、地元に宿泊する『体験』を提供しているのだということを理解すること。
大津山氏自身もPaypalでの自身の売り上げ金を原資にドバイなどへ情報収集の為訪れている。
大津山氏はもう何年も旅行費はPaypalでの売り上げから捻出している。
このように常に学び、成功事例を取り入れていくことが重要。
有限会社 アイディアズ・アンド・エフェクツ 代表取締役
柿沢 徹氏
なかなか表に出てこないAirbnbの考え方とコンセプト
自身が初めてAirbnbを使用したのは、5年前。数日前まで見ず知らずの他人同士だった2つの家族が旅を通して出会い、旧来の友人のような仲となった。
そして現在でも仕事、プライベート両面において関わりがある。
その経験から、通常のホテル宿泊では得られない、旅先での「人間的なつながり」を作り出す可能性を民泊に見出だした。
Airbnbの最大の魅力は、なにより「旅先の地元コミュニティーへの参加」が可能である点。ホテル宿泊にはない体験を求める旅行者を、民泊は満足させることができる。
パネルディスカッション
ご講演いただいたお三方、
弊財団事務局長伊藤がファシリテーターとして加わり参加者の方から質問を受けそれにこたえる形で行われました。
民泊とホテルの競合はどうなっていくのか?という参加者の方からの質問に対して
記念日などに民泊利用とし予約時のトラブルの懸念、
利用料金のマイル利用はホテルはやっているが民泊はやっていない。
などからまだまだホテルと民泊はガチンコ勝負ではないのでは?という議論や
家主不在型の民泊は空き家問題解消に繋がるのか?
など様々な疑問についてお答えいただき当初の時間をオーバーする大変有意義な時間となりました。
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