宿泊施設のミライを考える-厚労省、観光庁の法令担当者が語る旅館業法、住宅宿泊事業法のこれから
2017年7月19日(水)に「宿泊施設のミライを考える-厚労省、観光庁の法令担当者が語る旅館業法、住宅宿泊事業法のこれから」と題し、民泊新法と改正旅館業法、立法主旨が違うと言えど、小規模施設をはじめようとする場合には、なにがどう違ってくるのか分からない方が大半だと思います。民泊新法の政策当事者と、旅館業法改正の政策当事者をそれぞれ観光庁、厚生労働省より招き、両法令を立法主旨と法解釈含めわかりやすく説明するセミナーを開催いたしました。
1. 開会挨拶
JALFとjasminの関係と説明
jasminは、住宅宿泊事業者の団体で、JALFの下部団体として、2016年8月に設立され、JALFと同じく業界の既得権益ではなく未来を見据えた公益国益に基づいて活動している。また、民泊関連法整備に関して政府に助言、提言などを行なっている。特色としては、民泊関連の一般社団法人の団体が増えてきている中、それらを統括した連合会という位置付けである。また、住宅宿泊管理事業者も参画している。よって総務の実情と生の声を聞くことができ、バランスのとれた現実的な主張が可能となっている。JALFは、20年後を目処に世界に向けた宿泊産業のブランドデザインを常に考えている。一方jasminは、民泊事業者の総合調整機関として機能している。
2. 本日の趣旨
民泊経営を進めていくにあたって、経営面ではなく、法令・政策面の話しとなり、住宅宿泊事業法と旅館業法をセットで正しく理解いただくことが重要。民泊業界だけでなく宿泊施設業界全体として捉えていただくことで、宿泊施設業界全体の未来はどうなっていくのかを考えてもらえる機会となる。そして法令との関係性を正しく理解いただく。今後は行政庁の権限で、立ち入り調査や報告の徴集をすることができ、罰則が大幅に強化される。これにより民泊に関しては適正化が進む。一方で旅館業法の規制緩和、特に建築基準法の設備構造部分に関しては、大幅な緩和が見込まれるので新しい宿泊施設にとっては非常にやりやすい。そういう意味で言うと、現在、これから民泊業界が活況を呈すると言われているが、宿泊施設業界全体が活況を呈することができると言えるので、なおさら関係法令の住宅宿泊事業法と改正旅館業法をしっかりと理解する必要があり、今回、厚生労働省と観光庁のお話が同時に聞けると言うのは、非常に貴重である。そして、民泊は本来地域コミュニティの入り口であるのだが、現在あまりにも投資の対象になりすぎている。本来の意味・効果・役割を認識しながら、関係法令の正しい理解をいただく必要がある。という目的で設けた場でもある。
3. 住宅宿泊事業法と旅館業法の改正について
まず背景としまして、訪日外国人旅行者数が5年前は800万人であったものが、昨年は2400万人。さらに2017年の訪日外国人旅行者数は昨年に比べ約2割増を推移。そして宿泊施設の状況は、ホテル/旅館の客室稼働率の推移は、大阪の例ではホテルは93%で、なかなか予約が取れない状況だが、一方で旅館、簡易宿所は50%を割っているのですが、新規の供給見通しは、新規供給見通し分で対応可能な宿泊者数は、スライド表にあるように大阪府で1369人、近畿3府県で2837人程度を見込んでいる。
伊藤:もともと旅館業法がある中で、住宅宿泊事業法があえてできた理由は、用途地域が問題となっていたためですか?
鈴木課長:色々な要素が複合的にあったと思うが、観光庁全体で考えると、外国人が増えている中で都心を中心に宿泊施設が足りない。遊休不動産がある。キッチン、ランドリーが備わった長期滞在できる宿泊施設が少ない。実態が先行してしまっていて、社会的問題がクローズアップされてきている。近隣トラブル、匿名性の問題が発生していることが大きいと考えている。民泊がウケた理由としても、キッチン、ランドリーが備わった長期滞在できる宿泊施設だという事だと考えている。
という事で、ホテル新規供給は、大阪、近畿ではこの程度しか増える見通しがない。ですので宿泊施設供給対策としては、都心部ホテル以外の宿泊施設の利用促進、同時に容積率緩和等でホテルの新設、増改築、転用・改修の推進していく。それに加えて特区民泊条例による外国人滞在施設経営事業、簡易宿所営業許可の規制緩和、住宅宿泊事業法での住宅としての宿泊施設の提供を可能にする。などの取り組みをしていく。特にホテルなどの宿泊施設に関しては、容積率を従来の緩和された容積率からさらに緩和するという取り組みを行っている。続いて国家戦略特区における取り組みについてですが、本来なら有料で宿泊させる場合は旅館業法の適用となるのですが、一部の指定した地域のみとなりますが、ある一定の要件を満たせば旅館業法の適用が除外される。という仕組みなのですが、もともと6泊7日の長期滞在を想定していたので旅館業との区別が可能なはずが、いつのまにか2泊3日となっており、1泊以外の宿泊ができる状況となっている。そして、旅館業法の行なっていまして、平成28年4月には客室面積基準を緩和し、少人数10人未満の場合は、一人3.3m²以上であれば良いという基準に改正している。そしてフロント(玄関帳場)に関しては、もともと政令では義務付けていないのですが、自治体によっては条例で義務付けている場合があり、その場合は、条例の弾力的運用を要請している。あと農家民泊に関しても客室面積基準を適用除外となるよう省令を改正している。
法律に関しては、旅館業法の一部を改正する法律案が厚労省から提出されていて、継続審議の状況。次の臨時国会でも審議されることとなりますが、改正の趣旨としては、規制の緩和としまして、ホテル営業及び旅館営業営業種別を統合し、旅館・ホテル営業とする。ということになるのですが、一方で、違法な民泊サービス等を踏まえた無許可営業者等に対する規制の強化をし、無許可営業者に対する都道府県知事等による報告徴収及び立入検査等の創設、安かった罰金の上限額の引上げ等の措置を講じて、行政の権限をはっきりと定めるということであります。その他、欠格要件に暴力団排除規定等を追加する。以上のような内容となっていて、現在検討中ではありますが、色々な規制が緩和される方向で検討されている。その他にはサテライト型簡易宿所についての案も提出されていまして、サテライト型簡易宿所というのは、1つの事業者が分散する複数客室を使用して営業する場合の「客室分散型」と、複数の許可営業者が共同して玄関帳場を設ける場合の「共同玄関帳場型」があり、それぞれ誰がその業務を行うのかということでして、このような案も検討されている。
ここからは民泊についてとなりますが、そもそも民泊サービスとは、伝統的な旅館以外の宿泊施設を民泊というのではなく、先日成立致しました住宅宿泊事業法の民泊とは、明らかに住居用として共している家屋を一時的に有料で宿泊させていても、ある一定の要件を満たしていれば、旅館業法の適用が除外される。という法律。課題としては、何より匿名性の排除をして、外部不経済もできるだけ排除していきたい。そして業界が健全に成長していただきたい。そして平成27年から有識者と厚生労働省、観光庁が共同で検討を重ね、一定の要件を満たせば旅館業法の適用が除外される訳ですが、まずは180日以上は住居の用として共していることと、住居として扱われるわけですから、住居専用地域でも実施可能。ただ、地域の実情に応じて条例等により禁止することも可能となっている。他にも色々な要件はありますが、住宅宿泊事業法の概要としましては、住宅宿泊事業者、住宅宿泊管理業者、住宅宿泊仲介業者、のそれぞれに関わる制度について定められておりまして、詳細は他にも色々ありますが、住宅宿泊事業者は、まず都道府県知事への届け出が必要。
続いて住宅宿泊管理業者については、しっかりと国土交通大臣への登録が必要。そして住宅宿泊仲介業者は、旅行業と同じでしっかりと観光庁長官への登録が必要。住宅宿泊事業法と旅館業法の規制の比較ですが、基本的にはイコールフィッティングの考え方で、提供日数などは違うが、衛生・安全確保のための措置は同じで、食品衛生法に関しても食事を提供するのであれば同じ。民泊関連の情報共有に関しては、都道府県への提供日数の情報を国税局とも共有し、消防や警察とも共有していきたい。そして、民泊コールセンターを創設する。近隣住人が、どこに連絡していいのかも分からない。時期としては法律施行までに創設する。新法民泊に伴うマンション標準管理規約の改正も国交省の住宅部局内で検討されている。近隣トラブルの問題で民泊可か不可かをはっきりさせる。法成立の1年以内に施行しなければならないので、来年6月15日までに施行しないといけない。また、その3ヶ月前から事業の届出の申請ができるので、少なくても3月15日の少し前までには政省令を明らかにしたい。省令・ガイドライン等で定める予定の主な項目と内容ですが、事業開始届出に関する事項に関しては、新築マンションは居住の実態がないが、どうするか?空き家も現在居住としての実態がないが、どうするか? 事業運営に関しては、宿泊者名簿の内容や宿泊者の本人確認、標識の掲示内容や時間貸し禁止の取扱いについて定められる。その他には、条例での実施期間を制限する場合の条件等も定められる。以上となりますが、宿泊事業に関しては色々な法律はあるが、できるだけフラットに社会的問題が顕在化しないように、そして、色々な選択肢はあるが、うまく活用し多様性を持って、健全に社会に提供されるのが我々の願いであります。
. パネルディスカッション(質疑応答)
民泊に限らず宿泊施設業界は、これからどうなっていくのか、結局どの形態での民泊がいいのか等々参加者より盛んな質問が飛び、盛会のうちに終了いたしました。