Wednesday,December 04, 2024
宿泊施設経営は株主思想の反映
現在の宿泊施設において必要なナレッジを対談形式で語っていく連載。連載第14回目は、日本弁護士連合会 事業再生プロジェクトチーム座長としてさまざまな宿泊施設の事業再生に尽力されている堂野達之氏と、日本の宿泊施設における経営的な構造上の問題点について対談しました。
- 宿泊施設の企業再生はなぜ多い?
- 私はこれまで金融機関を含む利害関係者調整を中心とする企業再生を多く扱ってきました。宿泊施設かどうかを問わず、企業再生に至るには理由があります。当たり前のことですが、表層的には売上が減っていることが主因なのですが、その裏には、売上をあげるために本来必要であるマーケティング&セールスができていなかった、または組織的に本来必要であるマーケティング&セールス体制が築けなかった、ということが真の要因として挙げられます。
- 本来必要なマーケティング&セールスの体制が築けない?
- 現在の宿泊施設は特に、本来ビジネスとして必要不可欠な「売上を向上させる」という機能とノウハウがあまり見られません。基本的には、お客様が「勝手に来る」のをただ待っているだけで、積極的な販売施策をしていないように見受けられます。これは過去に「セールス」部分を旅行代理店にアウトソーシングしていた業界慣習の名残であり、他業種に見られるような実質的な「セールス機能やノウハウ」が内部に残っていないこと、さらには旅行代理店が宿泊施設を機能としてのみ考え十把一絡の扱いにしたため、「マーケティング機能とノウハウ(=競合との差異の明確化)」も消失してしまったことに由来すると考えられます。
- 事業収支が芳しくないのは誰が悪いの?
- マーケティング部門の機能やノウハウが脆弱、およびセールス部門の適正な往訪管理がなされていないのは、一義的にはマーケティング部長、およびセールス部長の認識欠如ですが、その状態を放置しているのは明らかに総支配人の責任です。しかしそのような状態にも関わらず運営の責任者である総支配人の任期が全うされるとしたら、それは経営の責任者である社長の責任です。その社長を任命したのは株主総会の多数決であることから、最終的な責任者は株主にあります。会社が赤字続きで株式価値がなくなれば、その損失によって責任をとったということになるのが現在の資本主義の考え方です。