Saturday,November 18, 2017

満室になったら管理不芳で「負け」

現在の宿泊施設において必要なナレッジを対談形式で語っていく連載。連載第8回目は、宿泊施設の客室レベニューマネジメントの第一人者として活躍されている堀口洋明氏に、宿泊業界における客室収益最大化について対談しました。

満室になったら管理不芳で「負け」

客室は満室にしなかったらもったいないですよね?
一面的な視点から見ればその通りです。せっかく立派な施設を用意しているのに、その日の客室を無駄にしてしまったということ、つまりせっかくの資源(リソース)を有効活用しなかったことになってしまうからです。しかし、この観点からしか物事を見ていないと、そこに大きな落とし穴があることに気づきません。
では満室にしないほうがよい?
満室にすることを最優先にすると、極端に言えば安くてもいいからとにかく客室を埋めれば何でもよい、ということになってしまいますし、そういうケースが散見されます。しかし、宿泊部門責任者の仕事は、与えられた総客室数という資源(リソース)を最有効活用して、売上(収益)の最大化を図ることに他なりません。客室からの総収入が、「満室100%×適当な平均客室単価」>「高稼働率90%×徹底的に管理し尽くされた平均客室単価」であると思っているのであれば、それは個人の勝手な思い込みかもしれません。
徹底的に管理し尽くされた平均客室単価とは?
一言で言い表すと、「高値で売れるものを、安値で売らない」ということです。例えば一週間前に満室になっていたとすると、それは実質的にかなりの件数の予約意向を断って機会損失を発生させていることになります。その中には、もっと高値で購入する意向があるお客様がいらっしゃった可能性が高いと考えられます。高値で売れるとわかっている商品を早々に安値で処分するのは、ビジネスの世界では肯定されるものではなく、このような事態は極力避ける必要があります。つまり、早い段階で満室にするのはいけないことなのです。レベニューマネジメントとは、満室にならないようにするために、客室販売価格を上げることによって客室累計販売数を抑え込むコントロール技術だとも言えるのです。
客室単価だけではない要因もある!
もう一つ、満室にすると、連泊のお客様が泊まることができなくなってしまいます。曜日別に考えると、売りやすい曜日に絡めて連泊を積極的に取らないと、埋めることが厳しい曜日というものが存在します。しかし、売りやすい曜日を先に満室にしてしまうと、連泊でないと埋めるのが難しい曜日は、埋めるための打ち手がなくなってしまうため、客室総収入が低下してしまうのです。
さらに、自ホテルが満室の日は他ホテルも満室の場合が多いため、数室の余裕を残しておき、法人企業契約先から1室くらい何とかならないかという要請を受けてあげられれば感謝され、将来宴会場利用などで回収するという期待も可能かと思料します。加えて、客室設備老朽化に対するフロントにおける不安を払拭する配慮ともなります。いずれにせよ満室にすることを最優先とする考え方は、百害あって一利なしであることは間違いありません。